no.1 no.2 no.3 no.4 no.5 no.6 no.7 no.8 no.9 no.10 no.11 no.12


















看看臘月尽

 「みよみよろうげつつく」と読みます。臘月とは12月の異称です。茶室には必ず茶軸が掛けてあり、その季節にあった言葉や何かしらのテーマに沿ったものが選んであります。この「看看臘月尽」は浅く解釈するならば、みるみるうちにまさしく蝋燭が燃え尽きるが如く月日は過ぎ去って行くという意味でしょうか。この連載もアッという間の一年でしたが、今月臘月もすぐに大晦日。人生における数字(時間とお金)は有効に使わねばと思いを深くします。

お歳暮

 時間とお金を有効に使いましょうということで、今月は「お歳暮」についてのお話です。まずはお歳暮の本来の意味をご紹介いたします。筆者が毎朝チェックするホームページ『増殖する俳句歳時記』からの出典です。
『物少し状ながながと歳暮かな』 島田雅山
 『この句が載っていた歳時記(『俳句歳時記・冬』1955年角川文庫)より「歳暮」の定義を。「年中行事の一。 歳末に際し、 既往の好誼を相互に感謝し合ふため贈物を交換したり、無異息災を祝ふために年忘れと称し親戚・知己・同僚間に酒宴を設けることをいふのだが、後に転じて物を贈ることのみを歳暮といふやうになつた。正しくは歳暮の礼である。酒・煙草・砂糖・新巻その他デパートの商品券などが用ゐられる」』

 なるほど、これを読むとテレビコマーシャルなどでよく見る、ハムやお酒を風呂敷に包み、玄関口に立つシーンはきわめてオーソドックスなスタイルであるといえます。

 『したがって忘年会などのほうが、歳暮の本義に適っている。ところで物を贈るにしても、昔は掲句のように必ず「(書)状」を添えるのが礼儀であった。あくまでも、歳暮は「交流」を感謝するしるしだからである』(「増殖する俳句歳時記」2004年11月19日)

 ここまで読んで、ふと思いました。本来は「親戚・知己・同僚間で」とあります。と言うことは職場の忘年会は例外として、気の合う仲間同士の忘年会が、昔ながらの本来のスタイルであり「歳暮」の定義にかなっているともいえるでしょう。そこで皆さん、どうです、来年からは義理で目上の人に贈るのをやめて、そのお金で仲間うちの忘年会をパーッとやるのはいかがでしょう。それは冗談として、対費用効果を考えてみましょう。

旬を贈る

 南国日南では、さまざまな果物が栽培されています。夏の西瓜、冬のミカンをはじめ最近ではマンゴー、スターフルーツ、ドラゴンフルーツなど南方系の果物も店先に並ぶようになりました。この夏に東京の先生にマンゴーを贈ったところ、大変好評でした。年によって気候が異なるため多少時期は前後しますが、6月中旬頃に日南のマンゴーは旬となります。また、冬のポンカンは正月明けに甘みが増します。ですから、お中元やお歳暮の時期に合わせようとすると、かえって本当の旬をはずしてしまいおいしくないものを贈らざるを得ません。図1を見てください。もらった人が、どちらをより喜ばれるかは一目瞭然でしょう。

ためにと立場では大違い

 本連載9月号「朝礼」でも紹介しました本『鈴木敏文の「本当のようなウソを見抜く」』に次のような文があります。

 「顧客のために」と「顧客の立場で」とでは意味がまったく異なる
 「私たちが″顧客のために″と考えるときはたいてい、自分の経験をもとに、″お客はこういうものだ″″こうあるべきだ”という決めつけをしています。だから、やってみてうまくいかないと、″こんなに努力しているのにお客はわかってくれない″と、途端に顧客を責め始める。これは努力の押し売りにすぎません。あるいは、″顧客のために″やっていると言いながら、そこには売り手側の都合が無意識のうちに入っていて、実態はその押しつけになっていたりする」(23頁から)。さらにこう続きます。
 「今の時代に本当に必要なのは、″顧客のために″ではなく″顧客の立場で″考えることです。どちらも、顧客のことを考えているように見えて、決定的な違いがあります。
″顧客のために″は自分の経験が前提になるのに対し、″顧客の立場で″考えるときは、自分の経験をいったん否定しなければなりません」(24頁から)。


 図2を見てください。「相手(患者・客)のために」と「相手の立場で」が異なることが、おわかりいただけると思います。

 子ども頃、叱られたときの親の常套句「秀樹ちゃんのことを思って…」。皆さんも経験がおありでしょう。日々の臨床でも「患者さんのことを思って」とか「患者さんのために」では、問題が解決しないことがあります。予約を守ってくれない、ブラッシングをしてくれない等々。いずれも、今まで述べてきたように「専門家としての知識や経験の押しつけ」に陥っているだけにすぎません。これでは堂々巡りで、決して解決には至りません。解決法はただ一つ「専門家であることを否定して、患者さんの立場になること」ではないでしょうか。

お返しを見直す

 お歳暮に話を戻しましょう。もらう人の立場を考えれば、お中元・お歳暮の時期に固執することはないと思います。贈りたいときに、贈りたいものを贈るのがベストです。「けど、頂いたらお返しをしないと…」と考えている読者の方もいらっしゃるでしょう。「お返し」ということ自体が「相手のために」と言いながら「自分の立場」をしっかり考えている証拠です。頂いたときには、すぐに礼状を出す、これで良いのではないでしょうか?それでも失礼になると思う方、その「失礼」はご自身の見栄に対する失礼なのかも知れませんよ。まだ納得できない方は、お中元・お歳暮の時期より早めに、贈りたい(謝意を表したい)人に旬のものを贈る。その方から(お返しの意味も含めて)お中元・お歳暮がきたら、すかさず礼状を書く、でいかがでしょうか。

読者の方にお歳暮

 1月号「一本足の椅子」から始まった連載も今月号「お歳暮」で終わりです。読者の皆様に感謝の意を込めて、メールマガジンをお送りいたします。ご希望の方は下記へ。
http://www.connote.jp/hanamaru/new.htm
 来年1月号からは、タイトルを変えての新連載スタート予定です。乞うご期待。皆様、佳いお歳を!



参考文献/
『増殖する俳句歳時記』(2004年11月19日)
トップページ http://www02.so-net.ne.jp/~fmmitaka
2004年11月19日 http://www.longtail.co.jp/%7Efmmitaka/200411.html
鈴木敏文の『本当のようなウソを見抜く』 勝見明
プレジデント社 1238円+税




ページの先頭へ
TOP PAGEにもどる