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オーラルエステ



「オーラルエステ」スタート前
 前回、ご紹介した「ハッスル隊」から、五年後の1997年秋にニコラ・シカでは「PMTC」をスタートしました。この「Professional Mechanical Tooth Cleaning」、今では多くの歯科診療所で導入されているとは思います。まずは、このケアの導入以前のことを、お話しましょう。

 1990年夏に、ニコラ・シカは開業しました。開業当初から、患者さんの主訴が解決し、ひと区切りついた時には、丸1ヵ月後のチェックをオススメしていました。場所柄、わりと、中年以上の方が多いこともあり、かなりの人が一ヵ月チェックを受けられるようになり、チェックの患者さんが増え、しだいに予約がとりにくくなり、間隔を二ヶ月に延ばしました。リコールというよりもフォローアップの意味が強く、「フォローの患者さん」と、院内では呼んでいました。アポイント帳の一時間の中に、フォローの方はひとりだけと、制限するほど増え、患者さんの間にも定着してきました。

 さて、開業時には周りのほとんどは田んぼでしたが、年ごとに、田んぼは埋められお店となり、すぐ近くに、郊外型の本屋さんがオープンしたのを皮切りに、あれよあれよという間に、食品スーパー、ドラッグストアと軒を並べるようになりました。学校帰りの高校生や中学生が、お店に入っては、アイスクリームやキャンデー片手に出てきます。こちらは、カリエスをつくりはしないかとヒヤヒヤしながら、診療室から見ていました。

「オーラルエステ」スタート
 そんな矢先に、スタッフが「PMTC」の研修に参加してきました。自分自身もこのケアを受けてみて、これはこれから必ず受けると思い、早速、作戦会議。会議の結果、ターゲットをまず女子高生に決めました。学校帰りにドラッグストアに寄る女子高生の足を、ニコラ・シカへよぶには、どうすればよいか?当時、女子高生の間で流行っていたものが「眉の手入れ(眉書き)」で、お化粧品屋さんの人に、眉を書いてもらうサービスもあると聞いて、すぐにスタッフにリサーチしてもらいました。その結果、「女子高生の予算は1,000円まで」という答えが返ってきました。

 リサーチのあと、「PMTC」普及キャンペーンを開始しました。名前は「オーラルエステ」。費用は期間限定キャンペーン価格で2,000円、半額のお試し券(1,000円)を作り、常連さんの中で興味を示した方に差し上げました。ねらいは女子高生とOLです。当時、木曜日が定期的な休診日でしたので、木曜日を「エステの日」としてオープンし、その日だけは完全予約制で、診療室は大人向けの落ち着いた雰囲気にしました。照明を少し落とし、スタッフの白衣を通常とは別の白衣に変え、待合室に置く雑誌まで変えました。BGMに関しても、「オーラルエステ」を受けられる方に、あらかじめ聞いておいて、その方の好みの音楽を流しました。さらに、当時はやっていた「プリクラ」を真似て「ピークラ」(P-CLUBpreventive-club 予防クラブ)をつくり、ピークラ会員は年会費(通信費含む)をいただく分、一回当たりの料金を安めに設定しました。また、ピークラ会員には、もらって嬉しいような奇麗な絵葉書を使って、予約確認のお知らせを出しました。

 スタートして数ヵ月経つ頃には、かなりの方が受けられるようになり、しかも意外なことに、多くの中高齢者の方が、ピークラ会員に登録されました。「フォローの患者さん」の中からも、かなりの方がピークラに入会されました。木曜日だけでは、時間が足りず、ついに「エステの日」は消滅して、毎日の予約の中に「オーラルエステ」を入れるようにしました。また、ピークラ会員が200人を越えた時に、「ピークラ」も発展的解消とし、会員の方(常連さん)も一見さんも同一料金にしました。今では、多い月には70人以上の方が「オーラルエステ」を受けに来られます。その後、料金の改定を数回行い、現在は大人3,300円、高校生以下2,500円、10歯以下の方2000円の料金で、4回目ごとのマイレージプレゼントも用意しています。 

参考文献
藤巻のたのしく商売する法則
藤巻幸夫 日本実業出版社
「オーラルエステ」のこれから
 さて、ここまで読まれて、違和感を感じられる方もいらっしゃることでしょう。これは、持論ですが、歯科診療所とは「病気を治すための病院」と「健康維持のためのスポーツジム」それと「美しさへ重きを置いたエステサロン」のちょうど中間に位置するような気がします図1参照。多くの患者さんの場合は、病院的要素に傾きます。ムシ歯予防のために歯磨きに来ている子どもさんにとっては、病院ではなくてスポーツジム。PMTCを受けに来ている方にとっては、健康維持のスポーツジム的要素を含みつつも、やはりウエイトはエステサロンではないでしょうか図2参照。ですから、ムシ歯予防目的の子どもさんは、皆笑顔です。そうであれば、こちらももちろん笑顔で応えます。薬品のにおいは馴染みませんし、こわそうな器具も必要ありません。彼らは、ちょっとした遊び感覚で来院しているのです。おなじく、PMTC目的で来られている方には、来られてから帰られるまで、ずーっと快適であってほしいと思います。病院レベルでの患者さんの受けるストレスと、エステサロンでお客さんが感じるストレスは、かなり違うと思います。

 最近、読んだ『藤巻のたのしく商売する法則』という本に、面白い文章を見つけました。
 「結局、元気な企業や成功している店はどこも、生活者としての自分を大事にしている人がトップに立っていると思う。だから、街の空気が読めるんだ」(143頁より)

 生活者という言葉もよく聞くようになりました。患者さんでなく、生活者としてとらえる。

 「そういう「生活密着型」の感性というか、センスが流通業ではますます重要になっているし、生活そのものを大切にするのがファッションビジネスでもあるんだ。ただ、モノを売ったり、作る場合、単に生活に密着しているだけではもの足りない。密着しながら一歩先を行く新しい暮らし方やライフスタイルといった「生活提案型」が必要。逆にいえば、一歩先を提案するには、今ある生活に委ねていなければならない。まさに「生活提案型と生活密着型の融合」が、これからの商売のスタンスだろうね」(144頁より)

 生活者の日常のなかへ、ムシ歯予防やシソーノーロー予防(PMTC)を取り入れてもらう時に、ひとつの「生活提案型ケア」として、提案する。取り入れた人にとっては、しだいに、ハッスル隊やオーラルエステが日常(生活密着型ケア)になる。次に、ホワイトニングや自費治療を提案していく。これはまさしく、一月号でお話しした、ニコラスパイラルなのではないでしょうか。


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