スタートは、その患者さんの初診時と考えてください。あなたの診療所に来られた患者さんが「高い意識を持つ人」もしくは、あなたの診療所が「高い意識を持っている診療所と認識されている」場合は、上のほうの「ブティックスパイラル」に進みます。患者さんという立場のお客さんと、あなた(歯科医師)の間には、「正直から信頼へ」の関係がベースにあります。治療内容・時間・コストは、けっして患者さんにとって快適で心地よいものばかりではありませんが、それらはプラスのストレスとして作用します。しかし、要した時間やお金以上の満足感が得られて、その患者さんご自身も、口腔内の他の歯もリピーターとなっていきます。時を経るごとに、そのお客さんの意識はさらに高いものとなり「品質から客のひいきへ」となり、その診療所は「知名度から憧れへ」とアップしていきます。
さて、下のほうはニーズを満たすだけの診療所の「コンビニサイクル」です。ここで、ニーズとデザイアの違いをお話しします。英英辞典を引きますと「ニーズとは必要なものが不足している状態のこと」とあります。すなわち、トイレットペーパーが無い状態、電球が切れた状態がニーズです。コンビニエンスストアの品揃えを思い浮かべてみてください。コンビニのほぼ100パーセントに近い商品が、このニーズです。一方デザイアは、無いなら無くても日常生活には困りませんが、欲しいと強く願うものです。
「あいててよかった」のコンビニサイクルの中で、日々を繰り返すのか。もしくは、「あ、いってよかった」のブティックスパイラルで、年々レベルアップしていくのか。あなたはどちらを選びますか?
「登山の目標は、山頂ときまっている。しかし、人生のおもしろさ、生命の息吹の楽しさは、その山頂にはなく、却って、逆境の、山の中腹にあるといっていい。」
(『いのち楽しみ給え』吉川英治 人生の言葉P26より) |