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ハイク・イント
●月
地球の衛星。半径1738キロメートル。質量は地球の約81分の1。大気は存在しない。日本では古来「花鳥風月」「雪月花」などと、自然を代表するものの一つとされ、特に秋の月を賞美する。
●鬼貫
上島鬼貫(うえじまおにつら)江戸中期の俳人。芭蕉の影響をうけた。
●皓々
白いさま。転じて、潔白なさま。月の光などの明るいさま。
●明眸皓歯(めいぼうこうし)
澄んだひとみと白い歯。
●癒す
病気や傷をなおす。飢えや心の悩みなどを解消する。

2003.October
名月や名月の名所は月にあり
大伴大江丸 [俳人 1722-1805 大阪生まれ]
【俳懺悔】 所収


 「前書で、俳諧の道は「浅きに似てふかく、易きに似て伝はり難し」という古人鬼貫の言葉を引きつつ、当代の俳諧が口先だけのものになっていることをいましめ、この句を掲げている。察するに、目先の繁盛にうつつを抜かす俳人を諷し、根本の初心に還れと叱った句と解しうるが、この句だけでも十分面白い。」(「新編折々のうた」より)
 名所の月が美しいのではなく、月そのものが美しいのだということでしょう。
 月と聞いて、思い浮かぶものに「荒城の月」があります。ある本の「荒城の月」の章に、「月の光は人に『観照』を促す」とありました。観照とは「智慧をもって事物の実相をとらえること。対象を、主観を交えずに冷静にみつめること」だそうです。また「月白風清」(つきしろく かぜきよし)という禅語があります。秋のお茶会などで良く目にする言葉です。
「月が白いというのは、月が皓々とさえわたっている様子。そこへ、さわやかな風が吹くことによって、いっそう月の美しさが引き立てられます。それはまさしく、心中一点の曇りもない、すばらしい境地です。なかなか、そんな境地にはなれるものではありません。あの月のように、すがすがしい心境になろう、もっともっと心を清めていこう、と」(「よくわかる茶席の禅語」より)
 「月が皓々」で、連想される言葉に「明眸皓歯」がありますね。我田引水ですが、白く美しい月を見ていると、歯科でブームになっている「ホワイトニング」を連想してしまいます。月が愛でられるのは、清澄な美しさゆえに、見ている人の心が浄化されるからでしょう。古来日本では、白は神性を持つ色としてとらえられてきました。
「白は日本人にとって、神秘や霊的なものを意味する色であったという。神様へのお供えの器がすべて白木であることが、古来、色を塗らない白木に神性を見たことを物語っている」と、『引用物』にあります。
 このように考えると、白はまさしく、清めの色と言えるのではないでしょうか。ゆえに、白くするということは、清めることであり、浄化することを意味するような気がするのです。加えて、白くする、すなわち清めることは、自分自身への癒しでもあるような気がします。自分自身の癒しを求めて、月に手を合わせるのではないでしょうか。癒すために清める、清めるために白くする。ならば、白くするということは、己を清めることであり、白い歯を求める心は、自分自身への癒しであろう、などと言っていると、大伴大江丸に諫められそうですね。

参考文献
1. 大岡信.新編折々のうた.第五.東京:朝日新聞社,1994.
2. 読売新聞文化部.唱歌・童謡ものがたり.東京:岩波書店,1999.
3. 有馬頼底.よくわかる茶席の禅語.東京:主婦の友社,1990.
4. 小山織.引出物.東京:マガジンハウス,1997.
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