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ハイク・イント
●松過ぎ(まつすぎ)
正月、松飾りを取り除いたあと。注連明け(しめあけ)。
●松の内(まつのうち)
正月の松飾りのある間の称。昔は元日から15日まで、現在は普通7日までをいう。
●おせち(御節)
正月や節句のごちそうに用いる煮しめ料理。ゆでかちぐり・昆布まき・てりごまめ・ごぼう・蓮根・芋・人参・くわいなどを甘く煮たもの。
●七福神
七柱の福徳の神。大黒天・蛭子(えびす)・毘沙門天・弁財天・福禄寿・寿老人・布袋(ほてい)。

2003.January
なんとなく 松過ぎ 福神漬甘き
岡本 眸 [俳人 1928年東京生まれ]


 「おせち料理や餅に飽きた頃のカレーライスは、新鮮な味がする。添えられた福神漬に、作者はこんなに甘い味だったのかと、感じ入った。・・・(中略)・・・それにしても、ありがたい七福神を漬物にしてしまったという「福神漬」の命名は大胆不敵だ。ちなみに福神漬けの中身は、ダイコン、ナス、レンコン、ナタマメ、ウリ、シイタケ、シソの七種類。明治十八年(1885)創製の東京名産である。」(『増殖する俳句歳時記』 15頁より)

 今でこそコンビニの増殖で、年末・年始にお店がどこも開いていないということはありませんが、その昔、年末は晦日(みそか)頃で店じまいし、明けて仕事始めまでは、どのお店も正月休みでした。そこでお節料理が食卓に登場していたわけです。店が閉まっていて新鮮な食材の入手が困難なため、三箇日すぎて、お店が開くまでは、毎日お節の重を箸でつついたわけです。

 味覚は舌にある味蕾(みらい)がその役をにないますが、口の粘膜やのど(咽頭、喉頭)でも感じます。これが味わうとなると、味覚、視覚、触覚、臭覚、聴覚の五感を総動員させ、嗜好を加味すれば人間特有の精神活動とでも言えましょう。日本人の味覚は、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つとして表現されますが、欧米人は甘、酸、塩、苦の四原味です。
 この味覚は、ただ単に美味しい・不味いだけではなく、次のような4つの機能が説かれています。
 第一に、おいしいかまずいかを判断することで、それが、体にとって食べ物なのか、毒なのかを知ること。
 第二に、体の調子の維持。体内のナトリウムイオンやブドウ糖などの欠乏を、摂食行動に結びつかせる。疲れた時には甘いものが欲しくなったりすることなど。
 第三に、おいしい・まずいを記憶に留め、摂食行動や忌避行動の学習を促す。
 第四に、反射的に生体反応の誘発。おいしいものをイメージすると唾液が出てくることなど。 (美味の構造 山本隆著)
いずれにしても、味わうとなればそれなりの道具が必要です。心のこもった料理をきれいな食器に盛られても、それを味わう道具がおそまつでは充分に味わうことはできません。味わう道具のひとつには歯があります。口の中の食器ともいえる歯を、きちんとメンテナンスすることは、隠し味に一役買うことになると思いますよ。

参考文献
1. 清水哲男.増殖する俳句歳時記
2. 山本 隆.美味の構造.東京:講談社,2001.
3. 広辞苑.第五版.新村出編.東京:岩波書店,1998
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