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「みっけ!2」――理由探し

クインテッセンス出版「歯医者さんの待合室」
2003年9月号に掲載



Baby Hustle 「ポケットルーペ/ドイツ ZEISS社製」
写真出展:
JOAN STEINER「LOOK-ALIKESTM Jr.」
Photography by Thomas Lindley


Mama Relax 『よくみて よくみて にたものランド』
ジョーン・スタイナー作
まえざわ あきえ訳
徳間書店 1,700円+税

 早いもので、もう9月。暦の上では秋ですが、太陽はまだ夏です。最近は、夏休みの宿題もあまりたくさん出ないそうですが、カルノが小学生の頃は、夏休みの友と称する宿題集があり、夏休みのカウントダウンとともに、残された多くの宿題を前に、途方に暮れたものでした。9月に入って、宿題提出。今思えばすぐにウソだと見破られるような「理由」を、あれやこれやと並べては、宿題をしていないことを弁解した記憶があります。さて、今回は先月号「犯人探し」に続いて「理由探し」です。
 お店の常連さんのお母さんから、メールが来ました。
『最近、娘が歯磨きを嫌がるようになってしまったんです。歯ブラシをあてるだけで、口を閉じてしまうんです。どうしたらいいんでしょうか? 歯は、上下4本生えています』。
 さて、困りましたねえ。じつはこのお母さんからは、数ヶ月前につぎのようなメールをもらっていました。
『葉書を送って頂き有難うございました。娘も10ケ月になり上の前歯2本、下の歯が4本生えています。自分で歯ブラシのおもちゃを口に入れて磨くのは好きなんですけど、私が指にガーゼを巻きつけて磨こうとすると嫌がるので歯の手入れは大変です。少しでも、口を開け磨かせてくれるといいんですけどね』。
「そう悩まずに! 娘さんがご自分で歯ブラシを口に入れて磨くのが好きというだけでも、すごい進歩です。たぶん娘さんが嫌がるのは、歯磨きのタイミングが悪いのか、お母さんの力がはいりすぎているのではないでしょうか?今の時期は、無理に磨くよりも、歯ブラシで遊ばせておいてください」。
『なんだか、ほっとしました。当分の間は、歯ブラシで好きなように遊ばせて様子を見ます。お忙しいのに、すいません』。
 1歳から4歳くらいの子供さんの歯の検診にいくと、良くこの相談を受けます。その時にまず答えるのが「理由があります」のひと言です。そうです、どんなことにも理由があります。子供さんは大人と違って、素直でストレートです。「イヤなことはイヤ!」です。子供さんが嫌がる時には、必ず理由があります。まず、その理由さがしをしてください。探しても見つからない時には、逆の立場、子供さんの立場になってもう一度探してみてください。きっと見つかります。
 いつの頃からか、ムシ歯予防の本には「子供の歯を磨く時や仕上げ磨きの時には、お母さんやお父さんの両膝の間に子供を仰向けに寝かせ、頭を安定させ……」というような「寝かせ磨き」をすすめるようになりました。悪い方法ではないのですが、この方法だと、どうしても、子供さんを押さえつけてしまって、磨く時に力がはいりすぎます。子供さんの立場で考えてみてください。晩ご飯を美味しく食べ、お風呂に入ってさっぱりとして、あとはベッドにいくだけの時に、羽交い締めにされて、大人の力でゴシゴシされたら、それはゴーモンです。仕上げ磨きをする親のほうは、親としての責任感や一種の正義感で、風呂場のタイルのめじの汚れを落とすかの如くに、しっかり磨こうと力がはいってしまいます。子供さんにとっては、両膝で押さえられて歯ブラシを突っ込まれ、ゴシゴシ。歯ブラシの頭がほっぺたや歯茎に当たって、アイタタ。その時のお母さんの顔は、さっきまでとはうって変わって、ものすごい形相です。子供さんが嫌がるのは当たり前でしょう。
 理由が見つかれば、あとは簡単です。ひとつひとつ、理由をはずしていけばいいのです。もし見つからなければ、今やっていることを、見方を変えて見直してみてください。寝かせ磨きを嫌がるなら、だっこするか子供さんを椅子に座らせて、目線を同じ高さに。歯ブラシを嫌がるのであれば、ガーゼを指に巻いたり、軍手の指を切って、指サックのようにして磨くとか。綿棒でも、ティッシュペーパーでもかまいません。歯に付いた汚れを、落とすことが目的ですから、寝かせ磨きや、歯ブラシにこだわることはありません。
 老婆心ながら付け加えますけど、たまに、お祖母ちゃんがついてこられて、『お利口にしていたら、帰りにジュースを買ってあげるからね』という声を聞くことがあります。悲しくなります。歯磨きやムシ歯予防処置(健康を維持するということ)と、ジュースを同じ次元で考えないでください。歯磨きは必要なことです。朝起きて「お早うございます」ということと同じ次元で、理由抜きに必要なことです。
 嫌がることには必ず理由があります。理由がはっきりしたら、嫌がらないように考えるのが、大人の知恵ではないでしょうか。知恵を出すために、まずは「ママ リラックス!」。そういえば、お礼のメールが来ていました。
『はい、分かりました。ニコニコ(*^_^*)で、歯磨きしてみます』

 ベジタブルスティックを入れる容器に、小ぶりのお弁当箱を使ってみました。スティックをラップに包んで、トートに直接入れる方法もありますが、ちょっと抵抗がありますよね。タッパーだと密閉できますから、水分が漏れる心配もありません。チュウチュウ吸って、バサバサになった部分は、折ってポイ。セロリに飽きたら、次はニンジン、そのあとキュウリ。将来、野菜が好きになることも請け合いです。
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