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クインテッセンス出版「歯医者さんの待合室」
2003年2月号に掲載 |
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「ランチボックス/無印良品」
ベジタブルスティックを入れて、
いつでも、どこでも。 |
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「どんなきぶん」
サクストン・フライマン&
ユースト・エルファーズ作
アーサー・ビナード訳 福音館書店 |
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ハッスル君は生後八ヵ月の坊や。今日は、カートに乗ってママとお買い物。春用のお洋服を買いに、BABY-GAPにやってきました。お店に入って、しばらくはニコニコでしたが、おなかがすいてきたのか、しだいにご機嫌斜め。そとの晴れた青空とは反対に、大きなオメメからは、今にも大粒の涙が……。
ところが、ママは、あわてることもなく、肩にかけた大きめのトートから細身のタッパーを取り出しました。フタをあけると、なかには色とりどりのベジタブルスティック!ニンジン、セロリ、キュウリときれいに並んでいます。余裕で「セロリがいいかな?」と、ひとりごと。ママにもらったセロリを手にしたハッスル君、またニコニコ顔で、キャッキャッと。
さて、皆さん。こんな場面に遭遇したこと、おありでしょう? かわいいわが子をカートに乗せて、ゆっくり、子供服を選びたいなと思っていても、そうはいかないのが現実です。市販のおしゃぶりだと、いまいちスマートさに欠けるし、お菓子もちょっとねぇ。そんなときに、オススメなのがベジタブルスティックです。シュガーフリーで、もちろんヘルシー。しかもベジタブルスティックなら、お店の商品に触っても、さほどトラブルは起こらないでしょう。ともかく一度、試してみてください。本にも次のように載っています。
「ふと、食卓の上をみると、セロリや、ニンジンや、キュウリなど、いわゆるスティック野菜が、ビールのジョッキに盛られています。これは、ちょうどいいかと思って、赤ん坊の手にセロリを一本握らせました。ととたんにぴたっと泣き止み、生まれて初めて口にするそのセロリを、こんなにおいしいものがあったのかというような満足しきった顔で、チュウチュウ音をたてながら、吸いはじめました。-中略-セルロイドのおしゃぶりを歯固めにいいなどと、勝手な理屈をつけて売っているのは、眉唾ものです。そういうものに比べたら、このセロリこそは、すばらしい自然のおしゃぶりだと、わたしは大発見したように、悦に入って、子どもの口元を見つめていました。
ところが、親子ともども満足していたのは、ものの四〜五分だったでしょうか。今まであんなにおいしそうにセロリを吸っていた赤ん坊が、それを口にしながら、またヒクヒクと泣きそうになってきました。大発見をしたと思ったのも束の間、セロリのご利益もたいしたことはないなとがっかりしながら、それを引っぱり出してみるとどうでしょう。まだ歯は一本も生えていないその口で、一生懸命吸い続けたセロリは、まるで白い筆の穂先のように、無数の繊維の束になっているではありませんか。その吸啜力のたくましさに、ビックリしました。
しかし、これでは味もそっけもないわけで、そのセロリを上下あべこべに持たせかえると、息子は、目尻に涙のしずくをつけたまま、またおいしそうにそれを吸いはじめました」。
「セロリ、この成功に気をよくして、その翌日からは、家内と一緒に生野菜作戦を展開し、野菜のレパートリーを、できるだけ広げるようにしました。ニンジンも、カボチャも、ナスやキュウリも、キャベツやレタスの芯も、あるものはみんなやってみました。
どこの家庭でも、よく赤ちゃんにミカンの一袋や、リンゴの一切れを持たせています。果物ももちろんよいのですが、生野菜の魅力は、大人には想像もできぬほどのものです。
成功の秘訣は、空腹時に与えることです。食べ物を与えるのですから、たらふくオッパイを飲んだあとなどは、食欲が満たされていて、とびつき方が違います。いま一つは、父親や母親が、赤ちゃんの目の前で、おいしそうにしゃぶることも大事です。わが家では、幼稚園の娘も加わって、毎日やっていました」。
『人間はなぜ歯を磨くか』石川純著(医歯薬出版)より抜粋引用 |