「エーちゃん、きれいな葡萄だこと!」
友人のエー子が持ってきてくれた包みを開けると、ハナさんは思わずこう言った。
「きれいなだけではなくて、美味しいのよ、この葡萄。この前の入れ歯のお礼よ」
「早速いただくわ。あなたの言うとおり、美味しいものは、確かに美しいわね」
「実は、私の入れ歯もそうなの。今度作っていただいた入れ歯は、美味しく食べられて、しかも美しいのよ」
「エーちゃん、あなた、もともと美人だったから(笑)。美味しく食べられる入れ歯って、あなたの口に調和してるってことなんじゃない。調和しているから、違和感がない、だから美しく見えるのよ、きっと」
「ところで、あなたが言ってた美人入れ歯だか、美顔入れ歯だか。友達に話したら、詳しく聞いてこいって。ねえ、教えてちょうだいな」
「えっ、もう他人にしゃべったの?」
「はっきり言うけど、みんな、美しくなることには貪欲なのよ!」 |