オススメ.61







「ヘミングウェイの言葉」
今村楯夫 新潮社 680円+税
ヘミングウェイの言葉

 ヘミングウェイは好きです。全作品を読破するようなエンスーではありませんが、彼のイメージも含めてのファンです。かれこれ10年以上も昔、モンブランが作家の名を冠した万年筆シリーズを発表しました。その第一号が「ヘミングウェイ」です。キャップにヘミングウェイのサインが彫り込んであります。実はちょうどその頃、拙小文「あなたがいれば」が入選し10万円の賞金をもらいまして、そのお金で即ゲット。ちょっぴり残る後悔は、ペアのボールペンを買わなかったこと。当時、ボールペンだけでも4万円位したと記憶しています。

「万年筆」
http://www.connote.jp/essay/cool/new.htm
「あなたがいれば」
http://www.connote.jp/office-h/gishi/gishi03.htm

 ワイン--楽しみ

 この世でワインほど文明的なものはないし、これほどの極致に到達した自然物も少ない。(『午後の死』より)

 さらに言葉を続けて「お金で買える純粋に感覚的なものの中で、おそらくこれほど広範囲にわたり楽しみと味得に耐えうるものはないだろう」とヘミングウェイはワインを激賛している。(126頁より)

 ブリューゲル--楽しみ

 あのすばらしいブリューゲルが見られないとは残念なことだ。(リリアン・ロス『ヘミングウェイの肖像』より)

 ヘミングウェイはロスと連れだって、メトロポリタン美術館に行ったが、ブリューゲルの展示室がたまたま修復中のため作品を見ることができなかった。(147頁より)

 老い--人生

 この男に関しては何もかもが古かった。ただ、眼だけは別で、それは海と同じ色をたたえ、活気あふれる不屈さがあった。(『老人と海』より)

 『老人と海』を書いたときにヘミングウェイは五二歳だった。10代、20代の若者にとって、50代の人びとは「老人」に見えるかもしれない。しかし、50代の当人からすれば、まだまだ若く、少なくとも自分は壮年期にあり、中年だと思っているだろう。(61頁より)

 ブリューゲルについては、ひとつの思い出があります。1992年のベルリンでのこと。学会参加のためにベルリンに一週間滞在しました。ホテルは旧東ベルリン地区で、すぐ近くに美術館や博物館はたくさんあります。ブリューゲルが旧西ベルリン地区の美術館に所蔵されていることを調べて知っていましたので、UバーンやSバーンに乗ってやっと美術館到着。中世の宗教画の部屋は飛ばして、ブリューゲルの絵に一目散。ところが、気が付くと出口手前のミュージアムショップまで、来てしまいました。ブリューゲルの絵も飛ばしたようです。閉館時間は迫ります。そこで、一案!ショップに並ぶ、ブリューゲルの絵葉書を指さし、英語で「これはどこ?」。そのおじさんは、しきりに絵葉書の値段を答えるのですが、何回か聞くうちに分かったらしく、展示場の地図でブリューゲルの絵の場所を教えてくれました。ひとけのなくなった館内を走りました。ありました、ありました。日光の眠り猫よろしく、イメージより小ぶりの絵でした。

 おかわりは、ワインに敬意を表して拙連載より、ワインのお話をどうぞ。

「ものづくり名手名言」
第23回・24回 フランスのワイン醸造家を訪ねて

http://www.connote.jp/essay/mono/mono23.htm




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