ハナマルコラム back number |BACK|NEXT

   
 
 
   


◆ハナマルコラム No.059
……………………………………………………………………………………………………

「奇跡のリンゴという事実」

 八月下旬の頃でしょうか、朝日新聞の広告で「奇跡のリンゴ」というタイトルの本を
知りました。表紙の写真には「「絶対不可能」を覆した農家木村秋則の記録」とあり、
NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」制作班=監修という文字も見て取れます。
 実はカルノの自宅にはテレビはありません。ビデオやDVDを見るためのモニターはあ
ります。ゆえに日常生活においてテレビを観ることは皆無です。たまに出張先のホテ
ルとか親の実家で目にするくらいです。今年の正月にたまたま実家で観たのが、イチ
ロー登場の初めて観た「プロフェッショナル仕事の流儀」でした。その時の記憶・感
動もあり、迷わずこの本を注文したのです。
 本が届いてしばらくは机の横に「つんどく」でしたが、何かの拍子に手にして読み始
めたところ止まりません。一気に最後まで読みました。特に、142頁冒頭「不可能を可
能にすること。無農薬でリンゴを栽培することに、木村の全存在がかかっていたのだ。」
この二行の文章が、ガツンと目に飛び込んできました。
 内容は大まかに、木村さんがリンゴ農家に婿養子としてはいる→奥さんがリンゴ栽培
に使用する農薬に弱い→たまたま買った本が無農薬栽培の本→まだ誰もやったことの
ない「無農薬でのリンゴ栽培」に挑戦する→失敗の連続→挫折→挫折の繰り返し→自
殺を計画→ヒントを得る→遂に成功!!というお話です。
 話の中で、表紙の顔写真を見ても解るのですが、なぜ「歯が無い」かと言う理由も出
てきます。歯科医師としてこれは興味深いことでした。歯が無い男性が、はっきり言
うならば「歯も無いおじさん」が、なぜ絶対不可能を覆すことができたのか。
 今でも毎日142頁だけは開いて読みます。「不可能を可能にすること」=「make the
impossible possible」仕事中もこの言葉を反芻します。では何を「不可能を可能にす
る」のかと言わせて頂ければ、ズバリ「ムシ歯をなくすこと」です。格好良く言えば、
なおす医療から守り育てる医療への転換・シフトです。木村さんの場合、この「奇跡
のリンゴ」に挑戦し始めた時には、まったくと言っていいほど成功する可能性や可能
性らしきものは持っていませんでした。かすかな予感程度のものはあったのかもしれ
ません。可能性やエビデンス(証拠・根拠)を持たずに始め、途中で歯までなくした
男性がやり遂げることができた。このような事実を知ってしまうと、カルノは燃えま
す。この本を読んで、もやもやしていたものがはっきりとしたビジョンとなって見え
てきました。
 実は、約二年前にこのメルマガで10年プロジェクトと称して次のようなことを書いて
います。

「10年プロジェクト」1  2006/08/08
 歯科医師になって丸20年、開業して丸16年たった今、今年前半頃からアメーバーのよ
うなものが、頭の中をぐるぐると渦巻いていました。過去20年がイモムシならば今は
サナギのような気がしています。先月7月頃に、ようやくそのアメーバーが形として見
えてきました。それが「10年プロジェクト」です。本年2006年から10年かけて取り組
もうと決意したプロジェクトです。はてさて10年後に蝶となるか蛾となるか。」

 この文章を書いて、早くも丸二年経ちました。まだ今はサナギです。しかし、何に羽
化するかが見えてきました。もったいを付けるようですが、その時期が来たらまたこ
のコラムで報告します。




   
 
 
   


◆ハナマルコラム No.058
……………………………………………………………………………………………………

「PASMO」
先月の東京出張で、初めて「PASMO」を購入し使用しました。結論:「非常に便利です!」日南に住むものにとって、このような「PASMO:パスモ」や「Suica:スイカ」は別世界の道具と思っていました。

ちなみにパスモとは? 
「PASSNET」の「PAS」と、「もっと」の意味を表す「MORE」の頭文字「MO」をとって名づけられました。さらに、「パスモ」の「モ」は、パスネットとバスが合体した「&」を表す助詞の役割も果たし、「電車も、バスも、あれも、これも」利用できるようになるという、拡張性を表す意味の「モ」の意味も込められています。
http://www.pasmo.co.jp/pasmo/index.html

 まずは羽田空港での購入のシーンからスタート。羽田空港ロビーの「i」インフォメーションで「PASMOはどこで買えますか?」と尋ねたところ「チケットの販売機で買えますよ」との返事。最寄りのモノレールの切符うりばでは、見当たらず。いつも利用する京急の切符売り場へ。ありました、ありました。5000円を買うとして画面をタッチ、「名前をいれますか?(記名しますか)」の問いにまずオロオロ。無記名の方が面倒くさくないような気がしたので、無記名を選択。来ました、来ました、PASMO!ニンマリしながら改札口へ向かい、まさに通過しようとしたその時、PASMOを切符のように器械を通すのか?最近よく見かけるように、かざすのか?迷いました。脳裏をよぎったのは、かざしている人のシーン。かざしました。残りの度数が表示されて、めでたく通過、ひそかにひとりドキドキでした。
 その後は、特に迷うことも、ドキドキすることも無く、PASMOでスイスイ。使いながらいろんな便利を感じました。

1−改札口に入る時までの時間短縮、もしくはゼロ。今までは、行く先を壁のマップで確認し値段を見て、販売機の前で・・・。このような行為がすべて不要です。
2−実はカルノは結構手にした切符をどこのポケットに仕舞い込んだのか、バッグのどこに入れたのかすぐ忘れる方で、降りる間際にあたふたと捜すことしばしば。これもなくなりました。
3−また、列車に乗ってから降りる駅を最終的に決定することが可能になりました。

一泊二日の出張で使ってみて、つくづく本来の必要な行為・行動(駅から駅への移動)以外に、いかに多くの行為をせざるを得なかったかということがはっきりと理解できました。一昔前の切符のコレクターならまだしも、味気ない切符の今、切符を買う行為は楽しくとも何ともありません。
帰南して、このPASMOのことを考えました。日南ではPASMOもSuicaもありませんが(カボチャはありますけど(笑))、この便利さは捨てがたいと、あれこれ考えました。すなわち、ひとりの患者さんが桜歯科の入り口の扉を開けてから、閉めて帰るまでの時間の中で、切符を買うことに相当する行為・行動を限りなくゼロにするということです。

1−駐車場に車を進めると空きスペースがそこにある。
2−扉を開け中に入るとスタッフが待ち構えている。
3−待たされることなく診療が始まる。
4−チェアの上での時間の空白(診療を受けていない時間)を使って、次の予約をとるなど、空白の時間が極力無いようにする。
5−チェア(診療台)を降りて受付に行くと会計がスムーズに終わる。
とまあ、イメージしてみました。名付けて「PASMO方式」もちろん「Suica方式」でも、構わないのですが・・(笑)。

 ちょっとしたことに気を配るシステムが出来上がれば、PASMO方式は実行可能でしょう。PASMO方式の最大のポイントは3の「待たされること無く診療が始まる」だと思います。手前味噌ですが桜歯科での予約の仕組み「待ち人おこらずシステム」を実践するようになってから、本当にビックリするくらい予約履行がスムーズに流れるようになりました。
「待ち人おこらずシステム」はこちらへ
http://www.connote.co.jp/office-h/nichola-sys/05/n05.htm
http://www.connote.co.jp/office-h/nichola-sys/06/n06.htm

  今回、PASMOを使ってみて、いろいろなヒントを得ました。最後にもうひとつ付け加えるならば「都会で流行るものには意味がある!」田舎に住む者にとって、一番のヒントかもしれません。
(クリックすると大きな画像が見れます)


PASMO




   
 
 
   


◆ハナマルコラム No.057
……………………………………………………………………………………………………


「聞き為しー法法華経ーホーホケキョ」

 さる文芸春秋の六月号に「ほうほけきょ」というタイトルで次のような文章が載って
いました。
  「春告鳥とも呼ばれ春の鳥の代表とも言える鶯の鳴き声である。我国の先達は鳥や虫
の鳴声をことばとして聞いてきた。これを「聞き為し」(そのように聞く)と称する。」
文芸春秋2008/06 223頁より
  今、自宅前の木立からは、朝だけですが今だこのウグイスの声が聞こえてきます。さ
すがに「ホーホケキョ」というよりも「ホケキョ、ケキョ、ケキョ・・・」です。他
にホトトギスも鳴いています。不思議なことにウグイスだけは、いかに聞いても「ホ
ーホケキョ」としか聞こえてきませんが、ホトトギスは「テッペンカケタカ」が有名
で、聞き様によっては「特許許可局」ともカルノの耳には聞こえます。皆さんも似た
経験があると思いますが、英語習いたての中学一年のころ、アメリカの犬は本当に
「バウバウ」と鳴くと信じていました。
  いずれにせよ、最初に「ホーホケキョ」と表記した人の耳と言うか才には感心させら
れます。が、しかし「ホーホケキョ」としたばっかりに他の鳴声には聞こえなくなっ
たとも言えるのではないでしょうか。聞き為しというより「聞き思い込み」です。 

 同じようなことが歯科の臨床でも起きているように思われます。すなわち大学で習っ
たことから脱皮できない!離脱できない!これは相当なマイナスです。何も大学の授
業を否定するものではありません。臨床なんて日進月歩、日々進歩しています。加え
て社会情勢もドッグイヤ(犬の時間はヒトの七倍の速度)と言われる昨今です。
  カルノは、この「聞き為し」の呪縛から逃れる方法として非常に単純ですが、二つの
ことを実行することがあります。ひとつ目は「完全に逆にしてみる(さかさま法)」。
もうひとつは「他のものに替えてみる(代替法)」。例えば「患者さんの予約」を考
えてみましょう。
  さかさま法で考えると「患者さんは予約を守る人々であり、守らないのは歯医者であ
る」。だいたい法では「患者さんによっては予約という考え方が別物である(時間の
進み具合が別)」。このように考えると、意外なほどあっさりと解決法が浮かんでく
ることがよくあります。すなわち「聞き為し」「思い込み」「決め付け」が、いかに
歯医者側に多いのかということに気がつきます。ここで注意してほしいのは「否定」
ではなく、逆さまであったり替えを考えるということ。ウグイスの鳴声は「ホーホケ
キョ」ではない!と否定しても、その先に進めません。英語圏の人にウグイスの鳴声
を聞いてもらい、どのように表記するか聞いてみたいものですね。



   
 
 
   


◆ハナマルコラム No.056
……………………………………………………………………………………………………

「ナビのTomTom」
  先月フランスは、ボルドー・ベルジュラック・サンテミリオンなどを五日間で回りました。五日間でちょうど1000キロ、一日200キロ平均のドライブでした。ボルドー空港でレンタカーを借り、ボルドー空港返し。車はフォルクスワーゲンのトゥーランで「TomTom」という名のGPS(ナビ)付きです。
  出発後すぐに左のマニュアル運転には慣れ(実は愛車は左のマニュアル)、一、二時間もすると右側の車線を走ることにも慣れました。出国前には、走行車線が違うことと、フランスの交差点がロータリー式になっていることに不安を抱いていたのですが、運転し始めて半日すぎる頃にはそれらが杞憂であったことに気がつきました。
  初日はボルドー空港近くのホテルから南下しアルマニャック地方へのドライブです。運転し始めてまず気がついたことは、運転手にとって最も必要な情報は、最終目的地がどこであるかということよりも、目の前に迫る次の交差点をどちらに進むかということです。
  ハンドルを握りながら、ふとあることを思い出しました。過去に2回フルマラソンを走ったことがあります。2回ともほぼ四時間半かかりましたから、走ったというよりジョグか早歩き程度のスピードですが、完走しました。このとき得た完走のコツは「始終ゴールを目指すのではなく、まずは次の電信柱まで走る」ということです。中間点を過ぎる頃から、思考能力は低下し身体はマシーンのようにひたすら足を動かすだけです。そんな時、向こうに見える「あの電信柱がゴール!」と自分に言い聞かせながら走りました。その電信柱に到着したら、また次のあの電信柱を目指して走る・・・。この繰り返しで、42.195キロを完走しました。
  初日予定していた生産者のところへは、TomTomのナビで無事時間とおりに着きました。そのナビは見事なものでした!(この成功体験があとで大ポカを引き起こします・・・泣)
  TomTomを使ううちに、使い方のこつも飲み込めて、みんなでしきりに「トムトム君はえらい!!」とほめていたところ・・・。三日目のことです。ボルドー市内でネゴシアンの方の事務所で試飲をして、昼からの予約へとトムトム君に目的地の情報をインプットしました。もうすっかりトムトム君を信用してしまっていたため、地図で確認もしないまま「オニバ!(さあ、行こう)」。約一時間走った頃、そろそろ目的地に近くなったと車を止め、道行く人に詳しい住所を尋ねたところ「カタストロフ!(大ちょんぼ)」。ナビのままに着いた場所はなんと、まったく別の場所でした。トムトム君に我々がインプットした情報にはミスも無かったのですが、なんとまあ!あらかじめ入力してあった情報にミスがあり、この大ちょんぼ。やはりセカンドオピニオンは必要です。結局、さらに一時間車を飛ばして予約の時間に数時間遅れで目的地にゴールしました。その生産者の方はもとボートのフランス代表選手として、バルセロナオリンピック出場の経験があり、ばりばりの体育会系。あっけらかんとした性格に救われました。
  折しも、4月から6月にかけて福岡で開催していたライブセミナーが「ナビデンチャ」。この体験と相まってナビについてじっくり考えさせられた旅でした。
(クリックすると大きな画像が見れます)


TomTom




   
 
 
   


◆ハナマルコラム No.055
……………………………………………………………………………………………………

「ウニ・メシ・ダコ」   2008/05/24

 今月中旬に一週間フランスに行ってきました。ボルドー・ベルジュラック・サンテミ
リオンなどを回ってきました。ワイン生産者に会うためです。ひょんなことから2002
年から毎年この時期に足を運んでいます。もちろん毎回、いろいろな学びがあります。
今回はその中から「ウニ・メシ・ダコ」のお話。
「雲丹・飯・蛸」ではありません(笑)。正確には「ウイ・メルシ・ダコ」、つまり
「ウイ=はい(肯定)」「メルシ=ありがとう(感謝)」「ダコ=賛成」の三語です。
旅行中にこの三語を良く耳にします。
ご存じの通りフランス人は文化的プライドの高い人種です。彼らは決して付和雷同で
はありません、それどころか特にワイン生産者は自分の造るワインの違い(個性)を
自慢します。自分というものをはっきりとしっかりと持っています。ところが、彼ら
との会話の中でこちらの意見が頭ごなしに否定されることは皆無で「このワインの20
02年は強さがイマイチだった」といっても、まずは「ウイ(ハイと言うよりなるほど
の意味)」と相槌を打ちます。こちらの言い分を一区切り聞き終えてから、彼らの意
見、時には反論を始めます。自分自身をしっかりと持っているということは、相手の
こともきちんと持っている(認める)ということなのでしょう。いつもいつも見習い
たいものだと思いながら端で聞いています。
フランス語は、よく耳に美しい言語と言われますが、彼らの相槌の打ち方、話の進め
方にも、心地よいものを感じます。「雲丹蛸飯」と書くと、どこかの漁師町の特製丼
のようですが、このような丼があったらじっくりと食べて咀嚼したい気がします(笑)。

ものづくり名手名言第23回
http://www.connote.co.jp/essay/mono/mono23.htm
ものづくり名手名言第24回
http://www.connote.co.jp/essay/mono/mono24.htm



   
 
 
    |BACK|NEXT    
   
ページの先頭へ バックナンバーへ トップページにもどる