2004.04.28
「色から艶へ」
 「金剛石も、みがかずば、たまの光は そわざらん」この「金剛石」という唱歌は明治20年(1887年)の作詞ですから、100年以上も前です。作詞者は、時の明治天皇皇后です。またこの金剛石という言葉は、広辞苑によると、最も堅い石、ダイヤモンドの別称で、源平盛衰記に登場する言葉だそうです。源平盛衰記(げんぺいじょうすいき)は、鎌倉時代の作とされていますから、これまた古いお話しです。
 さて、日常臨床において、PMTCやホワイトニングを定期的に継続されている方の歯を見ていると、「金剛石は磨けば光る」を実感します。くすみがとれて、本来の歯の色に戻り、ホワイトニングでさらにトーンをあげる。定期的な継続によって、歯の白さが維持されるのみなあらず、光沢がましてくるような気がします。まさしく”艶”がでてきます。
 この秋、待合室の女性ファッション誌を、ぱらぱらめくっていますと、この光・ツヤの文字がいたるところに見うけられました。
「そのくちびる、光線発色。リップ・グラマー誕生」
「まばゆい発色。グロスを超えたツヤ、耀き。」
「色、ツヤ、輝き、ボリューム。リップメイクのすべてを欲ばる!」
「ラグジュアリーな輝きの肌」
それはそれは、光・ツヤ・輝き・耀き、などの文字がちりばめてあります。
 先日、届いた「ASIAN DENTIST」のSPOTLIGHTに、「Colgate Simply White」の紹介がのっていました。「What do movie stars have in common besides stardom,wealth and glamour? Well,most of them have dazzling white smiles.」で始まっています。こう続きます「"Consumers have always desired for and it is Colgate's aim to satisfy those wishes" 」ここにも「光り輝く」が、でてきました。dazzlingとは、目もくらむほどの、まぶしい、感嘆させるという意味の形容詞です。数年前にビバリーヒルズの中心部に行った時のことです。ブランド店が軒を連ねる一角に、ティファニーがあり、その真向かいには「ブライトニングセンター」なるオフィスがありました。その時に、ホワイトニングの本家アメリカでは、肌の色のことが背景にあるのかもしれませんが、ホワイトニングよりも、このブライトニングという文字をよく目にしました。いまや、さらに輝くdazzlingです。磨けば磨くほど、光り輝くということの証でしょうか。このdazzlingの文字を使った真意はわかりませんが、臨床では、きっとそうであろうと思います。失礼な言い方ですが、肌は磨けば磨くほど、美しく輝くとは言えないでしょう。どうしても加齢を避けてとおることはできません。しかし、歯に関しては、磨けば磨くほど光り輝くような気がするのです。歯に関しては加齢を、華麗に変えることが可能なのかもしれません。
 近頃「エモーショナル=emotional」という言葉をよく耳にします。五感や感情に訴える、働きかけるというような意味合いで使われているようです。香水であれば、その写真広告を見ただけで、香りまでも感じられるようなポスター。日産フェアレディZのホームページでは、EMOTIONAL DRIVINGというコーナーがあります。頭よりも体や心で感じるドライビングであり、感動深いということなのでしょう。このエモーショナルな考え方を、ひとつの手法として、マーケティングにおけるブランディングに応用したマーク・ゴーベの著「心に響くブランド戦略 エモーショナルブランディング」には、次のように書いてあります。「『エモーショナルブランディング』は、気持ちに深く訴えるという方法で商品と消費者を結び付ける。そもそも人間の性質には、物理的な”モノ”によって得られる満足感以上に感情的な面で満たされたいという欲求がある。この新しいブランド戦略は、人間の最も抵抗しがたい側面に焦点を当てているものだ。人間の欲求の根底にある強い願望衝動を刺激することで、商品と消費者を感情的に結び付けることがブランドの役割だといえるだろう。」(15頁より)この文を、何度も読み返すうちに、私たちの臨床で行っている、ホワイトニングやPMTCなどのケアは、まさしくエモーショナルブランディングにもとづいたモノと言えるのではないでしょうか。dazzling white smiles は、人間の欲求の根底にある強い願望衝動を刺激するから、"Consumers have always desired for"= 消費者は、常に手に入れたいと切望する、となるわけです。
 冒頭の金剛石は、こう続きます。「水はうつわに したがいて、そのさまざまに なりぬなり。人は交わる 友により、よきにあしきに なりぬなり。」元気がないと言われて久しい歯科業界ですが、来院者を患者さんのままで、リピーターにするのか、患者さんからお客さんにアップしてから、リピーターとして確保していくのか。デンタルケア・オーラルケアを、歯科の柱になるような仕事ととして確立するか否か。言い換えれば、あなたの歯科診療所のブランディングを成功させ得るか否かの、ひとつの鍵が、ホワイトニングでありPMTCなのではないでしょうか。加齢を華麗なるモノに変化させるために「色から艶へ」。

参考文献
「マリ・クレール」 2003年11月号 アシェット婦人画報社
「心に響くブランド戦略 エモーショナルブランディング」 マーク・ゴーベ 宣伝会議
The JOURNAL of Cosmetic Whitening Vol.2 2004.2.15発行に掲載