2000.10.23
「ヘビとアヒル」
 先日、「ものづくり名手名言」の取材で、広島は安芸郡熊野町への小旅行でした。日南から行く場合、宮崎−広島間の飛行機もあるのですが、広島の飛行場から市街地までが遠いとのこと。そこで今回は、飛行機で宮崎−福岡、新幹線で博多−広島のアクセスでした。じつは今回はじめて、新新幹線なるものに乗りました。カルノの頭には旧新幹線のイメージしかなく、新幹線の顔には、アンパンマンのような丸い鼻が付いていると思っていたら、さにあらず。博多駅のホームに滑り込んできた「のぞみ」は、例えてゆうならばヘビでしょうか。鋭くとがったノーズ、銀色に光るスリムなボディ、金色に光る目、その迫り来る様子はまさしく、ヘビです。
 そのヘビの速いこと速いこと。博多−広島間が61分。博多を出たと思ったら、遠賀川、小倉、下関。下関駅のホームの看板『下関』の文字が読みとれないほどのスピードです。続いて徳山、そして広島。途中はトンネルで、本当にアッという間の広島でした。しかし、揺れますね。乗ったことはないのですが、おそらく馬車と同じくらい揺れるんじゃにですかね。いろいろなことを試してみました。まず、眠れません。本は読めますけど、つらい。目薬はなんとかさせました。トイレは、小用ですけど、振動を身体が受け入れて、括約筋が緩むまで少々時間必要。単眼鏡はまあまあ使用可。結局、飛んでいく途切れ途切れの車窓風景に目をやるしかない61分間でした。
 さて、取材を終えて、帰りは「レールスター」でした。例えるならアヒルの顔でしょうか。アヒルのくちばしのようなノーズをしていました。所要時間は1時間15分ほど。ヘビよりアヒルの方が愛嬌がありますし、乗り心地も快適でした。ヘビよりは揺れず、1時間15分間のほとんどを眠っていました。カルノにとっては緊張して眠れない61分よりも、ぐっすり眠れる1時間15分間の方に軍配があが りました。
 『速さイコール便利、便利イコールニーズ』のような方程式が成り立ちそうですが、如何なもんでしょう。15分遅くても、ぐっすり眠れる方が快適なようが気がしますが。あなただったら、ヘビとアヒルどちらに乗りますか?


2000.10.10
「能とおでん」
 久しぶりのニッキです。ニッキに書くような感動がなかったのではなく、何かと気ぜわしい九月でした、と言い訳。先日、延岡市(宮崎県)で開催された「薪能」をみて来ました。今回で三回目の鑑賞。日南から延岡までは、結構な時間を必要とします。昼前に出発して、途中、土々呂(トトロ)の高橋水産で、全国的にも有名なチリメンをゲット。ホテルのチェックインは三時を回っていました。まずは、会場の延岡城址内で、延岡御膳に舌鼓。ちなみに中味は・・。

一、御先附  ニガウリとチリメンの土佐酢和え 柿の白和え
一、御前菜  だし巻卵 抹茶里芋 日向かぼちゃ菊花銀あんかけ
       丸十(さつまいも) 栗渋皮煮
一、御煮物  鮎甘露煮 椎茸旨煮
一、御揚物  日向赤鶏照揚げ 一口あげみ
一、御酢物  延岡産めひかり南蛮漬け
一、御飯   鶏そぼろ飯
一、御水菓子 巨峰
一、御甘物  国栖菓子
一、御飲物  鮎酒 (添付メニューより)

これを読むとすごい御膳のようですが、実際は馬馬虎虎。
まだ、明るさの残る五時半からスタート。頭上の小枝ではつくつく法師が鳴き、カラスはカーと家路へ急ぎます。「菊慈童」のあと、松明に火が入り、狂言「附子」。メインの「国栖」が終わったのは八時過ぎでした。
 小腹がすいたので、おでんでも食べようとホテルの近くを歩いていたら、おでん屋さんからひとりの男性が出てきました。酔っぱらった伊集院静風の男性、その時、直感的に「ここは旨い」と思いました。連れも同意見で、迷わず中へ。大正解でした。お店を始めて50年近くなるとおっしゃる女将さん。店にはいくつかのルールがあって、一見の客として、初めは少々面食らいましたが、最後にはおでんのだしの取り方から、材料別の下拵えまで教えてもらいました。
 あまり能は良く分かりませんが、三回は鑑賞しようと思っての今回でした。延岡はえらいと思います。旭化成を中心に、スポーツでのまちづくりに甘んずることなく、内藤家伝来の天下一の能面で薪能を興す。そして、四年目の今年、ほぼ九割を越す席の入り。着実に根付いてきているような気がしました。本物を持ってきて、きちんと続ける。
 秋の一日を、チリメンと能とおでんをもって堪能しました。日本人を十二分に味わった秋の一日。また来年も、チリメン-能-おでんのフルコースです。