no.67
2008/10
「りんご箱りんごの隙の紅い闇」

日野口晃


奇跡のリンゴ

 日南ではみかんは日常ですが、リンゴは非日常です。とは言え、他の果物と違いリン ゴはヒトと深くかかわっているような気がします。旧約聖書のアダムとイブのリンゴ、 ニュートンのリンゴ、コンピュータのアップル。この文章もアップルで書いています。

 八月下旬でしょうか、朝日新聞広告で「奇跡のリンゴ」という本を知りました。その 表紙には「絶対不可能」を覆した農家木村秋則の記録」とかNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」制作班=監修という文字が見て取れます。届いてしばらく経って、何か の拍子に読み始めたところ止まりません。一気に最後まで読みました。142頁冒頭「不 可能を可能にすること。無農薬でリンゴを栽培することに、木村の全存在がかかって いたのだ。」この二行はガーンと目に飛び込んできました。

 内容は、リンゴ農家に婿養子としてはいる→奥さんが農薬に弱い→たまたま買った無 農薬栽培の本→まだ誰もやったことのない「無農薬でのリンゴ栽培」に挑戦→失敗の 連続→挫折→挫折の繰り返し→自殺を計画→ヒントを得る→遂に成功!!

 本の中で、なぜ「歯が無い」かと言う話も出てきます。歯科医師としてこれは興味深 いことです。はっきり言うならば「歯も無いおじさん」が、なぜ絶対不可能を覆すこ とができたのか。「不可能を可能にすること」=「make the impossible possible」 仕事中もこの言葉を反芻します。カルノは何を「可能にしたい」のか?ズバリ「ムシ 歯をなくすこと」です。木村さんが「奇跡のリンゴ」に挑戦し始めた時には、まった くと言っていいほど成功する可能性は持っていませんでした。可能性やエビデンス (証拠・根拠)を持たずに始め、途中で歯までなくした男性がやり遂げた。このような 事実を知ってしまうとカルノは燃えます。この本を読んでここ数年、もやもやしてい たものがはっきりとビジョンとなって見えてきました。

 実は、約二年前にメルマガに10年プロジェクトと称して次のようなことを書いていま す。

「「10年プロジェクト」 2006/08/08 歯科医師になって丸20年、開業して丸16年た って今年前半頃からアメーバーのようなものが、頭の中をぐるぐると渦巻いていまし た。丸20年がイモムシならば今はサナギのような気がしています。今ようやくそのア メーバーが形として見えてきました。はてさて10年後に蝶となるか蛾となるか。」

 さて、まだ今もサナギです。しかし、何に羽化するか(したい)が見えてきました。 ここに宣言、いつしか「奇跡のハイシャ」という本を書きます!
「奇跡のリンゴ」石川拓治 幻冬舎 1300円+税

「10年プロジェクト」-The Decade Project
http://www.connote.jp/hanamaru/040.htm





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