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「よろこべばしきりに落つる木の実かな」 富安風生[1885-1979 愛知県生まれ 俳人] |
ベジョータ=団栗(どんぐり) 句の解説に「しきりに落ちる木の実の雨を、喜んでいるので、逆叙法を取っている。軽妙な表現で、子供が手を拍って喜んでいるような気味がある。晩秋には、熟した木の実がひとりで落ち、ことに風の日などは、雨のように地上を打って、しきりに降りしきる。時雨にたとえて木の実の時雨とも言う」とあります。今回はドングリのお話です。 常々「インプットしたものしかアウトプットできない」「食べたものしかウンコにならない」と思います。まさにこのことを、この夏体験しました。 場所は福岡西中洲「トラットリア フィオーレ」。その料理というか食材は、ブームになっているイベリコ豚の生ハム、初めて食べました。口に運ぶ前に、今まで食べたイタリアの生ハムなどとは、なんか違うなという予感。ビロードのような光沢でツヤツヤ光っています。口に入れ、噛むとジワッとにじみ出るナッツオイルのような・・。 イベリコ豚について。スペイン南西部のエストレマドゥーラ州バダホス県で放牧されている豚です。雑誌「料理王国」に次のような文章を見つけました。 『樫の木の森に放されたイベリコ豚は、早朝の6時、早起きの豚なら5時にはエサのドングリを食べるために目を覚ます。辺りはまだ暗く、明け方の温度は氷点下に下がることも多い。 自然に落ちたドングリと下草だけで過ごす3ヶ月。これがモンタネーラと呼ばれるスペインならではの豚の放牧システムである。この期間、豚はグループ単位で樫の木の森を移動しながら、野宿生活者となる。3ヶ月食べ続けたドングリは、豚の脂にナッツのような独特の風味をもたらす。 ドングリで体重を増やしたイベリコ豚には、さらにその希少価値を示すためスペイン語でドングリを意味する「ベジョータ」という呼び名が与えられる。しかしベジョータの割合はとても低く、イベリコ豚の全体の1割にしか満たない。』「料理王国」2005/4月号から 味わいながら、この文章が頭によみがえりました。ナッツのような風味は、ナッツのようなではなく、まさしくナッツの風味なのです。生ハムに加工する時にオイルに浸したのではなく、生きている時に食べたドングリのオイルがカラダ全体、肉全体にしみ込んでいる。そんな感じを受けました。 知り合いの画家の方が、見たものしか描けないとおっしゃっていました。今回、ベジョータを食べて、つくづく「インプットしたものしかアウトプットできない」を確信しました。日日精進(自分自身に!)! 「トラットリア フィオーレ」 福岡市中央区西中洲2-9 tel:092-738-0858 |