no.44
2003/01
春の寒さとへば蕗の苦みかな

夏目成美[なつめせいび](江戸時代後期の俳人)


バイオフィルム

 昔ほど、お正月らしさが感じられないこの頃ですが、今年もよろしく読んでくださいませ。
 「お正月を写そう!」というコピーが聞こえてきます。普段の生活の中よりも、宣伝広告やラジオ・テレビの番組のほうに、お正月らしさが色濃く残っているようです。「写そう」といっても、最近ではデジタルカメラの普及により、そのうちフィルムは姿を消してしまうのではないでしょうか?
 さて、同じフィルムでも、歯科で話題になっているのは、バイオフィルムです。名前だけ聞くと、何かしらやわらかそうで、体に優しそうな、オブラートのようなイメージですが、実際は全くその反対で、かなり体にとっては危険で、手強いものなのです。歯の表面はエナメル質といってツルツルしているように思われますが、顕微鏡的には細かい溝があって、わりとザラザラしています。そのでこぼこに細菌や食べ物がくっつくわけです。ムシ歯菌といわれるミュータンス菌は砂糖をえさとして、ネバネバとしたものを作って歯の表面にへばりつきます。このネバネバの中でミュータンス菌は増え続け、しだいに歯の表面に分厚いバイ菌の膜を作っていきます。この膜を「バイオフィルム」といいます。このバイオフィルムの下では、作られた酸によって脱灰がおこり、ムシ歯が作られていくわけです。
 さらに、怖いことには、このバイオフィルム1グラムあたり1000億個ものバイ菌がすんでいます。その中には、もちろんミュータンス以外のいろいろなバイ菌もすんでいます。これらのバイ菌は、バイオフィルムの存在によって、抗生物質や薬液からガードされ、生き続けます。さらに厄介なことに、そのバイオフィルムの中で、いろいろな突然変異のバイ菌が生まれてきます。そうして、何かの拍子に、そのバイ菌の巣窟であるバイオフイルムから飛び出て、肺や胃の中へ入っていきます。それらバイ菌が肺炎やそのほかの病気を引き起こしかねないことは、想像に難くありません。
 さらにさらに面倒なことには、バイオフィルムができてしまったら、いくら歯ブラシでゴシゴシこすっても取れないということです。もちろん鏡で見ても分かりません。今のところ、そのバイオフィルムを剥がす方法は歯科医院でのPMTC(オーラルエステ)のみです。いまハッと、口に手を当てられた方、どうぞ、ご相談ください。私たちが、バイオフィルムを除去してさしあげますよ。

参考文献 「もう虫歯にならない!」花田信弘(大学の先輩です)新潮OH!文庫





ご感想はこちらまで!!

sacra@connote.co.jp