no.40
2002/01
ハンバーガーショップもなくて雪の町

内山邦子

「ファーストデハナイ!」

 昨年11月にロサンジェルスに行きました。テロの影響で、機内はガラガラと言うよりも、まさしくスカスカでした。エコノミークラスにもかかわらず、完全に横になって熟睡することができました。ひとりで五席使えたからです。帰りの便も同様で、近くの席の日本人女性二人組は、通常、機内食AかBかひとつ選ぶところを、AもBも、ひとりで食べていました。完全に横になって熟睡できて、腹一杯機内食を楽しめたら、座席はエコノミーでも、サービスはファーストクラスです。
 最近でこそ、「ファストフード」と言いますが、少し前までは、「ファーストフード」と呼んでいました。「ファスト」が正解です。1971年7月にマクドナルドが銀座に1号店をオープンして以来、ハンバーガーを筆頭にこれらの食品、食スタイルは瞬く間に日本中に広がっていきました。その速さ、まさしく「ファスト」。
 その昔、早飯なんとか、芸のうち・・。なんてことを耳にしていましたが、このファストフードは、注文して、目の前に出てくるまでも、ファスト。時には、注文した舌の根の乾かぬうちに、出来上がることさえあります。ところが、それなのに、まずくない。これにはやはり訳があります。その訳を、企業努力・企業戦略・企業秘密と言えば、正しそうに聞こえます。近頃、食品の袋などに「○○風」と言う表現をよく目にします。風とは「いかにもそれらしい様子。また、それらしいふり。」と広辞苑には出ています。極端な言い方でしょうけど、企業努力風だまし・企業戦略風わな・企業秘密風うそ、であったら、あなたはその食品を食べますか?真っ赤な鮮やかな色のイチゴ。農薬のなせる技であるとも聞きますが・・。
 「ファストフードが世界を食いつくす」を読み始めてからすぐに、ファストフードに足を向けなくなりました。正確に言うと気味が悪くなって足が向かないのです。ファストフードを否定する気はありませんし、この本の見方とは違う角度から、ファストフードをもっと知ることも必要でしょう。しかし、当分の間、足を運ぶことはないでしょう。唯ひとつの救いは、この本を知る少し前に、佐世保の「ブルースカイ」で、ハンバーガーを食べたことです。驚きました、こんなにも心に響く味のハンバーガーがあったとは・・。山登りでの、頂上おにぎりに匹敵するような味わいでした。ファストフードの対極にあるハンバーガーです。
 今回、伝えたかったことは、ファースト(first)フードではなく「ファストfastフード」であるということです。
 「タダノファストデアル!」

参考文献
  • 「ファストフードが世界を食いつくす」
          エリック・シュローサー   草思社





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