no.39
2001/10
海女の戸の醤にひたす小鰺かな
『花袱紗』(昭四七)所収

橋本鶏二[1907-1990] 三重県生まれ

食の堕落

 今、食に関する本を読んでいます。「食の堕落と日本人」と「ファストフードが世界を食いつくす」です。どちらのタイトルもちょっとドキッとします。今号から食べ方とか、食べ物、食事について、しばらくじっくり考えてみたいと思います。

「食生活が乱れるとその人の体調が崩れるのと同じく、国民の食の周辺が乱れてくるとその国の社会も崩れてくる。早い話が今の日本だ。」「たった百二十五円のサンマがなぜそれほどうまかったのか。言うまでもない、それは旬のものだからだ。・・しかも、サンマがいちばん美味しい時期、すなわち「旬」というのは、サンマがいちばん安い時でもある。サンマに限らず、旬の時期というのは、産卵期ゆえに群れているので大量に獲れてたんぱく質や脂肪ものり、最も栄養がある時だからだ。」
-食の堕落と日本人より

「毎日、何億人もの人々が、深く考えることなく、自分の行動の間接的あるいは直接的な派生効果に気付くこともなくファストフードを買っている。彼らはこの食べ物がどこから来るのか、どうやって作られるのか、そして周囲の共同体にどんな影響を及ぼすのかなど、まずもって考えない。・・わたしが本書を著したのは、ファストフードを買うという晴れやかで楽しい行為の裏側に潜むものを、人々は知っておくべきだと考えたからだ。あの胡麻のついたバンズのあいだに、本当は何が隠されているのかを。古いことわざにあるように、「人の体は食べ物しだい」なのだから。」
-ファストフードが世界を食いつくすより

「ハンバーガーの上にはゴマが載っています。標準の数は450粒、このゴマを乗せる機械を調整して、10粒少なくする工夫をしたところ、全国で年間250万円の節約になった、ということです。・・安い食事代はありがたいことに違いありません。しかし私は、本当に原材料の食材は大丈夫なのか、とやや心配になります。」
-良い食材を伝える会のニュースレターより


 皆さんもこれを機会に、どうぞ考えてみてください。最後にブリア・サヴァランの有名な言葉をのせておきます。

     「どんなものを食べているか言ってみたまえ。
      君がどんな人であるか言いあててみせよう。」


参考文献
  • 「食の堕落と日本人」 小泉武夫 東洋経済新報社
  • 「ファストフードが世界を食いつくす」 エリック・シュローサー 草思社
  • 「美味礼賛」 ブリア・サヴァラン  岩波文庫





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