no.30
1999/07/20
「水飯のごろごろあたる箸の先」
星野立子(俳人 東京生れ 1903-84 高浜虚子の次女)

箸=はし

週刊誌の見出しに『急増!!ハシなし族の末路 キレる、早死に、総入れ歯』とありました。ハなしで総入れ歯はわかりますが、ハシなしで総入れ歯?大意は次のようです。
「最近見られる傾向で、朝食抜き、昼はパンやファストフード、夜は帰りがけにコンビニフード、一日中箸を使わずに栄養バランスの悪い食生活をしている若者をハシなし族と呼ぶ。今は子供の頃から高タンパク高脂肪の偏った食生活をしている。こんな”油漬け人生”では長生きできるわけはない。ビタミンやカルシウム不足になりキレやすい。噛むことの少ないハシなし生活は胃腸、脳、歯や歯茎にも良くない。ハシなし族は朝食抜きが特徴。一方きんさんぎんさんには学ぶことが多い。昔ながらの食生活を一日三食キチッとしている。スプーンを使うのはカレーライスぐらいで、魚の煮付け、刺身、野菜の煮物、煮豆、おかゆなどはハシで食べる。しかも入れ歯がなくて、今も丈夫な歯茎で食事 をしている。云々・・」
先の春号でフランスの食事のことを書きましたが、今や最長寿国日本の秘訣が昔ながらの日本食にあることは欧米も認めるところです。一度きりの人生、何もファストフード(fast food)で食べ急ぐことはないのでは。しかし歯科医としてひっかかるのはきんさんぎんさんの逞しさ、入れ歯はなくとも、ハなしでも、ハシさえあれば長生きできる。転ばぬ先のハシなり。

参考文献 サンデー毎日99.5.23号
百六歳のでゃこうぶつ 鈴木朝子 毎日新聞社




水飯=すいはん

冒頭の句の水飯はお茶漬けと勘違いしていました。本によると「水飯には二つの種類がある。ひとつは贅沢な方法。炊いたばかりのご飯を冷たい水で洗って、冷水を掛けて食べる。盛夏の食事である。もう一つは暑さに饐えてしまって、糸を引きそうな飯を、水でよく洗って、ねばりを除き、それに冷たい水を掛けて食べるのである。それでも駄目なときは糊にしてしまう。」昔の人は凄い、偉い。

参考文献 食べもの俳句館 草間時彦 角川選書





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