no.16
1996/1
「医者殿はけつくうどんで引かぶり」
俳風柳多留

顔晴れ=がんばれ

 顔晴れ、これは笑顔共和国の大統領、福田純子さんの年賀状の言葉です。がんばれも「顔晴れ」だと肩の力も抜け頬もゆるみます。7日付けの天声人語に、「頑張る」がでていました。『「頑張る」は、どこか、せかせかした感じだ。「頑張れ」には、時に無神経で残酷な響きがある。』同感です。僕もあまり「頑張れ」は好きではありません。
 ところで「顔晴れる」ですが、歯科を訪れる人で顔晴れの方は少ないようです。痛みのためか、顔は曇りもしくは雨です。以前ティファニーのリング売り場に見物に行った時のこと、思わず店員さんに言いました。「あなた方はいいですね、いつもニコニコしたお客さんに接していられるから。」やはり、僕らもニコニコした患者さんの方が、好きです。痛みを我慢してニコニコしてほしいと言っているのではなく、歯医者=痛い=眉間に皺、をやめてほしいのです。もちろん、まず我らが、笑顔で迎え、痛みのある場合は痛みを取り、笑顔で送るようにすべきですが。
 近頃、よく笑うことが病を治すと耳にします。これは本当のことで医学的にも証明されています。ただムシバだけは、一度なったらどんなに笑っても治りません。ですから痛くなる前に、顔晴れで訪れてください、治療もさほど苦痛無く始終ニコニコでいられるはずです。しかもムシバの無い健康な歯であれば、あなたの笑顔は誰にも負けない、場の雰囲気を和らげる赤ん坊の笑みにも勝る笑顔です。

食べて治す

 医者殿はご自身の調合なさる風邪薬の効き目について懐疑的なのである。結句(結局)、風邪を引いたら皆と同様熱いうどんを食い、ふとんを引っかぶって寝るのが一番というわけ。
(冒頭の句の解説:「新編折々のうた 大岡 信」より)






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