no.13
1995/4
「春 にが味 夏 は酢のもの 秋 辛み
 冬 は油と 合点して食へ」

石塚左玄(1851〜1909、福井生まれ、明治の食物学者)

「春にが味」

 春になれば、蕗のとうをはじめとし、蕨、ぜんまい、たらの芽、筍、たんぽぽ、蓬とどれをとってもにが味を含んでいる。これら山野菜は昔から血液を清浄化するといわれている。冬の間どちらかといえば運動不足で、しかも寒さのため脂肪分を多く摂る。その結果、血液が酸性化、汚血する。それを先の山野菜をいただくことによって洗い流し清めてくれる。
 夏はキュウリ、ナス、トマトといった成り物の時期で、これら野菜にはすっぱ味が含まれている。夏は気温が高く体内の水分が減る。このためつい水分を多分に摂ってしまい、食欲不振となり、さらに体力が低下する。夏の炎天下で熟れたトマト、ナス、キュウリは栄養価の高いことはいうまでもなく、含まれるすっぱ味も一段と強い。このすっぱ味は東洋の民間医学で涼性といわれ、外熱から受ける体熱の上昇を押さえる役をしてくれる。
 秋には木胡椒、しょうが、唐辛子といったピリッとしたものが旬のもので、夏の暑さで疲労した心身にピリッとした辛味が刺激を与えてくれ、生気を呼び戻してくれる。
 旬がなくなりつつある今、こういうものを御馳走と言うのかもしれません。

「心に花を、食に潤いを」より抜粋 藤井宗哲 東京堂出版

「聞くクスリ」

 利くクスリではなく聞くクスリのお話です。
 ここにとりいだしましたるは、妙ちきりんでなく、明珍の火箸風鈴であります。かのシンセの巨匠、冨田勲に「弱いピアニシモで響く音に、なぜか自分の魂がスーッと遠くへもっていかれる」と言わしめ、冨田氏がスティビー・ワンダーに贈ったところ、「耳のそばで音を聴いていても、遠くから鳴っているような気がする」と聞き惚れたとか。パンフレットには「その昔、京都九条の甲冑師だった時に、近衛天皇の勅命で鎧や轡を作り献上致しましたところ大変気に入られ、明珍の姓を賜りました。その後、千利休の注文を受け茶室用火箸として作られたのが明珍火箸。打ち合わせると、鈴虫の声色のような澄んだ音を響かせます」との説明書き。鈴虫は涼虫につうじ、カッカ来た頭もこの風鈴の音を聞けば、たちまち冷静になることうけあい。春なのになぜ風鈴の話かって?日南の夏は早いから、いえいえ、今から注文しないと夏に間に合わなぬ(かもしれない)ためであります。

明珍本舗 〒670 姫路市伊伝居上ノ町112番地 0792(22)5751





ご感想はこちらまで!!

sacra@connote.co.jp