no.10
1994/7
「半夏生 鰻 食べたくなりにけり」
鈴木真砂女 『居待月』(昭和61)所収。明治36年千葉県生まれ

「鰻の幇間」

 落語の中にも哀しい落語てえものがありやして、「鰻の幇間」とは桂文楽で有名な、その一つでありやす。
 落語のすじはさておき、一年のうちで鰻にとって世にも哀しい日が土用の丑であります。鰻の一生は未だナゾ多く、夏から秋の産卵と冬から春の幼い時季は海で暮らしますが、シラスと呼ばれるようになると岸に寄り河を溯って育ち行きます。今では殆どが輸入養殖もので、台湾・中国で育ち現地で加工して持ち込む方法がふえてきているそうです。縄文時代より食され、万葉集の中には大伴家持が夏痩せの石麿呂に鰻を推めた歌が二首残っています。鰻の料理法には、なます、刺身、蒲焼き、茶漬け、すしなどがありますが、やはり一も二もなく蒲焼き。しかも関東風の蒸し焼きが一番であります。そこで軽脳おすすめ蒲焼きは、日南市から北郷、田野、高岡通って、西都市は都萬神社西、「入船」であります。蒲焼きの味もさることながら、一緒にでてくる呉汁がすごい。鰻の蒲焼きとくれば、きも吸いという概念をうちやぶる呉汁。今夏の猛暑を乗り切る入船の蒲焼きと呉汁。店主の御自宅(おそらく)の屋根と壁が蒲焼き色、これも必見の価値あり。
 ちなみに古くから言われる「食い合わせ」に「うなぎと梅干し」があります。これは満更うそではないようで、鰻には脂が多く、梅干しには食塩が多い。ともに濃厚な食べ物で、濃厚な食べ物をそのまま胃に入れると、高い浸透圧による刺激で下痢を起こすことがあるそうです。
 びろうな話になったところで、そろそろおあとがよろしいようで。

入船 西都市穂北島内町 0983(43)0511






ご感想はこちらまで!!

sacra@connote.co.jp