no.3
1992/10
「そが上に青き蜜柑の酸をしたたらせて」
佐藤春夫『我が1922年』(大正12年)所収
明治25年和歌山生まれ、昭和39年没

口臭=こうしゅう

 よく口がにおうと来院される方がいらっしゃいます。大半は、歯垢、歯石、むし歯などの歯に関するものが原因となります。欧米人は、古くからキスの習慣があるため口のにおいに敏感で、すぐ相手に指摘されるし、本人もふだんから気を付けています。たまに口臭がないのに自分の口はにおうと思っている方がおられます。歯科に行って原因が見つからず、内科的疾患も特に無ければ心配いりません。小沢昭一の文に、「子供のころ、友達と相撲をとると、魚屋の子なら魚の、豆腐屋なら豆腐の、木材屋なら木材のにおいがしたものです。」とありました。
 歯をみがくことは、息をみがくこと、あなたはおいしいキスしてますか?

秋刀魚=さんま

 さんまは細長いサカナの意の狭真魚(さまな)が訛ったといわれ、「秋刀魚」と書く。細長いからだでくちばし状の両あごを持ち、背は青黒く腹は銀白色。秋に美味。まさしく「秋刀魚」である。冒頭の佐藤春夫の詩の「そが上に」の「そ」とはもちろんさんまのことである。落語「目黒のさんま」にあるように、さんまは塩焼きにかぎる。そして柑橘類をかけて食べるのが一番うまい。なぜ塩焼きがうまいかというと、旬のさんまは脂質が16%もあるためで、熱く焼いて脂が舌に残らないように冷めないうちに食べる。栄養的にもEPA、DHAなどの不飽和脂肪酸を多く含み、動脈硬化、心筋梗塞、高血圧を防ぐ、若返りのビタミンEを多くもつ。安くて、うまくて、体に良い、言うことなしである。
 さんま、さんま、
 そが上に青き蜜柑の酸をしたたらせて
 さんま食ふはその男がふる里のならひなり。
 佐藤春夫「我が1922年」より

遊学=ゆうがく

遊学の本来の意味とは少々異なりますが、先日、学会出席のためベルリンへ行って来ました。驚いたことに、道端に空きかんがほとんど落ちていないのです。ですから非常に街路がきれいです。聞いてみると、治安が良くないため自動販売機を道端に置けず、そのため、空きかんがでないとのこと。一方、日本では治安が良いため自動販売機があり、空きかんが散乱する。何かしら矛盾を感じました。ふと、食生活とむし歯の関係に似ているような気がしました。噛みごたえのある昔ながらの食事では、歯はさほど汚れずむし歯にもなりにくい。軟かく、ぜいたくな最近の食事では、歯は汚れ、むし歯になりやすい。
 ベルリンはそうじしてきれいにしているのではなく、汚さないからきたなくない。日本は、そうじがまにあわないほど汚すため、結果的にきたない。あなたはどう思われますか?






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