オススメ.55







「自分の仕事をつくる」 西村佳哲著
晶文社 1900円+税
自分の仕事をつくる

 『また一方に、丁寧に時間と心がかけられた仕事がある。素材の旨味を引き出そうと、手間を惜しまずつくられる料理。表には見えない細部にまで手の入った工芸品。
一流のスポーツ選手による素晴らしいプレイに、「こんなもんで」という力の出し惜しみはない。

 このような仕事に触れる時、私たちは嬉しそうな表情をする。なぜ、嬉しいのだろう。

 人間は「あなたは大切な存在で、生きている価値がある」というメッセージを、つねに探し求めている生き物だと思う。そして、それが足りなくなると、どんどん元気がなくなり、時には精神のバランスを崩してしまう』(6頁から)

 この文章を目にした時に、ハラリと目からウロコが落ちました。自身による自己肯定と他者からの認知。いいモノに出会った時の感動・喜び、そして、そのいいモノを所有したいと思う衝動。これらのことを全てこの文章が明らかにしてくれました。この逆の動きが、次の文章です。

 『「こんなものでいい」と思いながらつくられたものは、それを手にする人の存在を否定する。とくに幼児期に、こうした棘に囲まれて育つことは、人の成長にどんなダメージを与えるだろう。

 大人でも同じだ。人々が自分の仕事をとおして、自分たち自身を傷つけ、目に見えないボディーブローを効かせ合うような悪循環が、長く重ねられている気がしてならない』(7頁から)

 この本を「いいモノ探し」の哲学的根拠として、今日からさらに深く「いいモノ探し」の旅に出ます(笑)。

「ものづくり名手名言連載」

http://www.connote.jp/essay/mono/cont.htm




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