
● |
嵐山光三郎 著 |
|
マガジンハウス/1,600円+税 |
|
 |
頬っぺた落とし
う、うまい! |
落合正勝さんは『ダンディズム』のなかで「集中すれば新たなモノが必ず見えてくる。何にせよ私は真剣に取り組んできた」とおっしゃっています。特に、食べることにダンディズムを求めている人が、この方、嵐山光三郎さんだと思います。
「『最後にこれを食べてくださいな』と、大トロの筋のつけ焼き握りをカウンターに置いた。神崎は立ちあがりながら口に入れ、『う、』と声を出した。寛が神崎の顔を覗き込み、『うまいでしょう』と言った。『う、う、う、うるせえや』と神崎は声をあげ、玄関の戸をピシャンと閉めて歩き出した。歩きながら神崎は、死んだ浜岡健の顔を思い浮かべながら、『うまい!』と声を出した。」(115,116頁から)
洋服など、身につけるモノは結構値が張りますが、日頃食べるものとなれば、ピンからキリです。そこで、真剣に食べる。真剣に選ぶ。限りあるお金と時間を、こだわって使うことが、ダンディへの近道のひとつのような気がします。「ダンディになるためには王道はあっても、近道はない!」と、落合氏の声が聞こえてきそうですが……。
おかわりも嵐山さんの本です。この本を手に、大和寿司に行きました。並んでいる間に、じっくり読みました。やっとカウンターに着き、食べているうちに、うまい理由がわかりました。江戸前寿司を築地で握ってもらい、大将の江戸弁を聞きながら、食べる。もちろん「う、うまい!」。 |