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町工場・スーパーなものづくり |
「ものづくり 名手名言」の連載もあり、カルノは「ものづくり」という言葉に敏感です。
伊勢神宮の和釘、井原西鶴の「西鶴織留」に始まり、フェラーリ、宇宙衛星まで話は進んでいきます。また、その仕事特有の言い回し・言葉も出てきます。著者ご本人が、現役の旋盤工ゆえの深さでしょう。
「ただいえることは、多少不器用で、どうもほかの人のようにはじょうずに手先が動かなくとも、ちょっと道具を工夫すれば、人なみの、あるいはそれ以上の仕事がかならずできるということである。そして、わたしの長い工場体験からすると、しばしば、器用な人ほど、自分の器用さに溺れて、道具を工夫しない。ぎゃくにすこし不器用な人のほうが、かえってその不足分を知恵で補おうとして、ほかの人が思いもよらぬ工夫をする」(52頁から)
本の最後で、「工」の字の訓読みについて書かれています。「たくみ」と読みます。「言葉たくみに−」は、軽く聞こえそうですが、この本を読み終えると、「工」が重いものに思えてきます。ズシリとくる重さではなく、敬意を払うべきもの、歴史や伝統、年月が必要なものという意味での重さです。この本を読まれたあとには、「歯科技工」という文字が、今までとは違う言葉として見えてくるでしょう。 |