お若いようですが……。
今、28歳です。私からさかのぼって、7代前頃からブドウ畑を所有していました。4代前からワイン醸造を始め、ワイン醸造家としては、私で5代目です。
ワイン醸造学校を出て、免許を取得したのちにアフリカに渡りました。フランスでは、免許取得後に自分の家から半径50km以上離れたところで修行しなければならないという決まりがあります。自分の家では、仕事はできてもなかなか修行とはいかないでしょう。50km以上であれば、いくら遠くても構いません。より遠い方がより修行になると思い、南アフリカで6カ月間、ブドウ造り、ワイン造りの修行をしました。その後、ここに帰ってきました。
あなたのワイン造りのスタイルは?
造るワインのうち、90%は赤です。少ない銘柄(アペラシオン)で多くの本数を造るよりも、多くの銘柄で少ない本数を造るようにしています。繊細でフルーティなフレーバーの赤ワインを目指しています。
すべての赤ワインは樽熟させます。樽のうち30%は新樽です。12カ月間、樽熟させたのち、翌年の9、10月頃になって、コンテナタンクに移します。このタンクは、澱(おり)沈殿が効率よく行えます。そして、ワインが澄んでくると、瓶詰めです。このタンクはネゴシアンビジネスをしていた祖父の頃からのものです。澱を取るためにフィルターは使いません。ワインと樽との相性もあり、これらの新樽も、生産地を選んで使っています。
技術的な特長としては、マセラシオン(炭酸ガス浸漬)を3週間と長くやります。15日間かけて、ゆっくりと発酵を促します。1週目を10℃くらいで、2週目からは32〜34℃まで上げていきます。ブドウに関しては、100%除梗(じょこう ブドウの実に付いている小さな枝を取ること)します。他には、特別なことは何もしていません。テロワール(土の性質)が、一番重要と考えます。私の造るワインは、その質の80%は畑で造られると思います。ですから、毎日、畑には足を運びます。毎日行きますけど、作業は季節によってさまざまです。成長を見守ったり、病気や害虫から守ったり。ともかく私のワインは、そのほとんどが畑で造られるといっても過言ではありません。父は心底ブドウ畑が好きで、ブドウ生産農家の鑑のような人です。その点私は、ワイン醸造や製品の流通などにも非常に興味があります。親子でいいバランスだと思いますよ。
ワインは世界中を旅する機会や世界中の人々との出会いをもたらす |
この仕事を選んで悔いはないですか。
もちろん、ありません。ただし、家業がワイン造りだからといって、自動的にワイン醸造家になったつもりはありません。確かにもっと若い頃は、将来の仕事のことなど何も考えませんでしたし、わかりませんでした。しかし、今はこの仕事に就いて幸せだと、素直に思えます。たいへん、幸福です。
ワインの世界は、まさしくマジックなのです。ワインの世界は、一つの不思議な世界と言えるでしょう。ワイン造りや完成したワインの取引・流通を通して、私に世界中を旅する機会を与えてくれます。それはさらに、私のワインや造り方に興味を持ってくれる世界中の人々との出会いをもたらせてくれます。
また、毎年、ワイン醸造法全体を検討し直します。その検討会は、あたかも、偉大なシェフにとって「この新しい料理には、どのワインが合うのだろうか?」という問題のように、私たちワインの造り手にとっては、毎年、さらなる最高級のワインを作り出すための真剣勝負、まさしくタイトルマッチなのです。
そうして、私のみならずあなたであっても、ワインについて熱く語り始めるとき、周りの人たちは、それまでの振る舞いをやめて、マジックショーが始まるのを固唾を飲んで見守るかのように、あなたのワイン談義に耳を傾けるでしょう。
ですから私にとっては、ワインの世界はまさしくマジックと思えるのです。ワイン造りそのものもマジックであり、できあがったワインもマジック。そのワインを語ることさえも、マジックショーなのです。
|