クインテッセンス出版(株)
歯科衛生士 2002.vol.31
2002年12月10日発行

■■■■■■■■
ベリ子

ニコラ歯科勤務。雑誌「ベリィ」を愛読し、格好いい大人の女を目指す30歳。オシャレ同様、仕事にもひとひねりをプラスするのがルールだと思っている。
グラ子

ハナ歯科に勤務する歯科衛生士。ベリ子とは同級生で、学生時代からのつきあい。愛読誌は「グラチア」。仕事の愚痴や悩みをよくベリ子に相談している。


いちばんきれいな言葉は「わたくしは」、それを奏でる「私の歯」




ベリ子 「もう今年もおわりね」
グラ子 「クリスマスプレゼント、何にするの?」
ベリ子 「今年は、わたくし自身にエルメスを!」
グラ子 「どうしたの?急に、『わたくし』だなんて」
ベリ子 「さすがにバッグはちょっと手が出ないので、エルメスの本を読んだの」
グラ子 「その影響?・・・さすがベリ子」

■■■■■■■■■■■■■■

 その昔、鈴木健二元NHKアナウンサーが、「わたくしという言葉が一番きれいである」と言っていました。「わたくし」という言葉の後には、ぞんざいな言葉は似つかわしくない、ということです。さて会話の中に出てくる「エルメスの本」とは、鈴木ルミ子さんの書いた「エルメスを甘くみると痛い目にあう」です。第一章「エルメスを持つということ」にこう書いてあります。
『彼女たちは、暮らしのステージの象徴として、エルメスを買うのです。彼女たちにとってエルメスを持つということは、暮らしのレベルがそこまで上がったことの証として自分にご褒美をあげる「コト」なのです。単なる「モノ」ではないのです。』
 わたくしたち、歯科医療従事者の仕事や役割も同様です。ただ単に、口腔内の健康の維持のお手伝い(モノ)にとどまらず、生活者の皆さんのQOL(クオリティオブライフ)を高めるコトがわたくしたちの仕事なのです。
 また、立場をかえて言えば、生活者の皆さんは、あくまでもご自分の快適な暮らし、健康な人生を送るためのひとつのツール(手段・方法)として、歯科のサービスを生活の中に役立ててください。
 わたくしたち歯科医療従事者は、生活者の皆様のクオリティオブライフサポーターです。
参考文献 鈴木ルミ子著「エルメスを甘くみると痛い目にあう」 東京:講談社、2001.


 グラ子と読者の皆さんへ。7月から今まで、紹介したお話は、もうおわかりのようにひとつのツールにすぎません。このツールをどう使われるかは、あなたたち次第です。最後のアドバイスとしてお伝えしたいのは、いつも「主人公は誰?」っていうことを、少しでもいいから考えてほしいということ。私たちは、患者さんに接するときに、つい、患者さんをただ単に医学的にヒトのからだとして、見てしまいがちです。医学的観点はベースには必要ですが、やはり私たちと同じ人間(生活者)として見るべきではないでしょうか。
 わたくしたち従事者は、ややもすると方法・手段にウエイトを置きすぎてしまい、主役である生活者の目的やゴールを見誤ってしまいます。また、生活者の皆さんにとっては、完璧なブラッシングを修得することではなく、健康で美しい口もとで生活を楽しむことが目的ですよね。「主人公は誰?」を自問自答すると、ベストではなくても、必ずベターな答えは見つかると思います。
 そうそう、ちなみに、「エルメスを甘くみると痛い目にあう」の本の中でも、すべて「わたくし」が使ってあるんですよ。





[ベリ子のコピーはおまかせ-Contents-]